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01

【俺がピだ】皐月

「汗」
辛いものを食べると汗が出る。当たり前のことを言ってしまって申し訳が立たないが、私の場合その汗のかきっぷりが異常で困っているのだ。

例えばカレー。はじめに断っておくと、私は人並みにカレーが好きである。しかし、甘口のカレーだとしても、私はそれを食べるとじんわりと顔面に汗をにじませる。あまり辛いとは感じていないので、スパイスの成分がそうさせるのだろうか。それは分からないが、気づくと汗がにじんでいるので不快である。

そんな甘口ならば、食べ終わった後、ティッシュを数枚顔に押し当て、おいしかったなと余韻に浸ることができるのでまだいい。中辛よりの甘口だと、ちょっと辛いかもと感じることはあれど、食べれなくなることはないから良しとする。

これが中辛くらいになると、ほとほとひどいことになります。一くち目で「あ、これはやばいかも」と不安になり、二くち目でもう雫を垂らしている。辛いなあ、いやあ辛いよと思いつつ食べ進むと、五くち目くらいでドバドバと汗を流してしまいます。じんわりとにじむのではない。言葉通り、頭皮の毛穴から水滴を解き放ちそれを顔面いっぱいに滴らせるのだ。私の髪の毛は汗の湿気ですこし跳ね、熱さや不快さで風呂に入りたくてたまらなくなる。水を何度もおかわりし、はあはあと舌を出しながら天井を見上げる。汗を拭えるものを手あたり次第に掴みとり、額や首をそれで拭く。そしてカレーを口へ運ぶ。

「うわー辛い!おいしい!」

またはあはあと舌を出す。水を飲む。汗を拭く。

こうなることは分かっているので、私は辛いと明記されているものは進んで食べないようにしているし、辛口のカレーは食べたことがない。飲食店で、辛いと明記されていないことに安堵しカレーを頼むときがある。それでも六割か七割は辛い。悲劇である。私の悶絶を気にして店員がお冷を注ぎに来る。

「大丈夫ですか?」

「おいしいです」

嘘をつけ。そんな顔で店員は戻ってゆく。私はカレーが好きだ。



ある仕事場のまかないで、ビュッフェ形式でカレーとそばが出されたときがあった。そこは数十名のスタッフがおり、手のあいた者から食堂で好き勝手食べていいという場所だった。私はわりと早い時間に食堂に入り、そこでなにも気にせずカレーを選んだのだった。これが間違いだった。おとなしく、冷たいおそばをすすっていれば良かったのだ。

そのカレーが思ったよりも辛く、案の定私は汗を垂らした。一緒にいた友人ははじめ「汗すごいよ(笑)」と笑っていたが、数分後は本気で私を心配しているようだった。間違いなく中辛以上、辛さレヴェル4から6かといったところか。その程度でも、私にとっては非常事態である。汗と辛さで、私はカレーを食べ進むのがやがて困難になっていった。

あとから食堂に入ってきたスタッフは、私の異常な汗とテーブルに積まれたティッシュの山を見、「あのカレーはめっちゃ辛いみたいよ」と話し次々とそばをよそっていった。五人に一人はカレーライスにしたりカレーそばにしていたが、ほとんどの人間は私の様子を見て明らかにカレーを避けていた。あとから来たスタッフが食堂から出ていっても、私は食べきれないカレーを前に汗と戦うのみだった。もう一度言うと、カレーが辛過ぎるのではなく私の汗が異常なのだ。

噂を聞きつけた厨房のチーフが食堂に入ってきた。チーフはカレーの鍋とそばのざるを交互に見て、それからカレーをひとくちすくって飲んだ。首をかしげる。それから、私の席に来てチーフは言った。

「お前のせいでカレーが余っちまうじゃねえか!」

この仕事場ではじめて人を怒らせた。





ある日、母が夕飯にカレーを作った。

私はひとくち目で予感がし、母に言った。

「これ甘口じゃないでしょう!」

ショックだった。母は私がカレーは甘口じゃなければいけないことを忘れていたのである。その日のカレーのルウに、母は中辛のものを採用したのだった。

私は自分が母に対して怒るものだろうと思っていたが、気づくとぽろぽろと涙を流し泣いていたのには驚いた。カレーの辛さは、ときに人を泣かす。

母も、まさか私がカレーが甘口でないことに泣くとは思ってなかったようで、あまり見たことのないような挙動不審を見せていた。その後、母は近所のコンビニに車を走らせ、チンするたこやきを買ってきてくれた。私はめそめそそれを食べ、残ったカレーは母が無言で食べていた。困った息子である。



このように、私の辛さに対する汗の量は常軌を逸している。嘘かと思ったら、ぜひ私と一緒にカレーを食べに行っていただきたい。そこであなたは、引くほどの狼狽えを見ることになる。
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