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vol、2「行貝チヱさんの取材をさせていただいて」


酷暑とどう向き合っていくか考えさせられた、暑く厳しい平成最後の夏。
ただチヱさんがいた場所は別世界だった。
エアコンいらず、そよ風が吹く心地よい空間の中で心熱くなるお話に自然と涙があふれた。
演劇、フォトコラージュ、カメラを大切に、そして着実に極めてきたその中で起きた3.11。当時東京に住んでいたチヱさんは、帰宅困難で人が溢れかえっていたあの異常な状態を「人災」と表現したチヱさん。誰かによって遮断されてしまう恐怖。人が多いことによって集団力に侵されてしまいそうになる不安。選択肢がなくなる危機感を感じ、チヱさんは移住を決意した。

移住の地としたのは伊豆。ここに来て出会った人たちは自分自身のことを深く考える人が多く、道しるべの一つになった。そんな中で学生時代に勤しんだ「農」の世界を深く探求する。


ここでチヱさんが素晴らしいのは、地球規模での永続的な自然農法を探求するのに「まずは自分の家に自分の微生物を育てるために畑をつくる」という、身の丈でできることを徹底してやる姿だ。一人ひとりが正しいと思うことをやる、そこから拡がってやがては地球規模になり、世界を愛が優しく包み込む。そんな温かくも強い気持ちに、私の心は揺れ動いた。


手間がかかると見えて実は合理的で永続的な生き方をチヱさんは目指しているのではないだろうか。
その手間一つ一つに愛情や喜び、時には悲しみもあるだろう。でもそれが人生なのだ。
「すごしてきた時間、生きてきた全て肥しでそれを写真に落とし込める」
そう語るチヱさんの写真を改めてみると、やはり人生は素晴らしい、日々を心地よく、そしてユーモアをもって生きよう。自然をもっともっと感じられる自分でありたい。そんな願いにも似た思いにさせられた。
そして行動を起こした人に結果は待っているのだ。だからやりたいことはやってみよう。言い訳せずに。
ライター:富嶋智美
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