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04

桃と真空管とソーダフロート

【桃と真空管とソーダフロート】


沼津で桃が実っているのだ

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今回は、ちゃんと事前に言っとくからね、「編集部が行く」で書いてね。(ニッコリ)
待ち合わせを打ち合わせるメールのやりとりの最後に、スズキはそう書き添えた。
でしょうね、と心の中でうなずいたペコ吉である。

沼津は桃の産地だった、と聞いたのは今から数年前。
御用邸のある島郷という地区は、もともと「桃郷」とも書き、つまり桃の里(郷)であったそうだ。
海岸線に沿って続く道の両側に隙間なく続く住宅の波。ここが桃の林だったとは、とても想像できない。

ikor e-BAKEさんでは、毎年この時期、トウゴウの桃を使った焼き菓子やコンフィチュールが店頭に並ぶ。トウゴウの桃とは、島郷(桃郷)の桃だろうか。幻のような桃がなぜ、ikorさんで?
ペコ吉の可憐な心は、毎年、波立っていた。

今年も桃の季節、ikorさんの店頭にトウゴウの桃を使った焼き菓子が並び、ついにペコ吉は満を持してikorの詠子さんに質問をしてみた。
「トウゴウの桃って、島郷の桃ですか?ほとんど市場に並ばない桃ですよね?」
矢継ぎ早の質問にも、詠子さんはいつもと変わらない穏やかな笑顔で「市場を通じて仕入れているよ」とやわらかく応えてくれた。
ずっと沼津の桃が気になっていたこと。ずっと見たかったことを話し続けたペコ吉の暑苦しさが詠子さんの記憶に残ったと思われ、その数日後、詠子さんから桃を栽培している方と連絡がつき、見学させていただけるとのことだった。

これが大人の対応力である、とペコ吉は心に刻んだ。

トウゴウの桃に食いついてきたペコ吉に、最初から桃を栽培している人を紹介しましょう、と安請け合いせず(安請け合いには定評のあるペコ吉)、桃は市場からの紹介で仕入れていると控えめに答えつつも、きちんと手順を踏んでペコ吉の暑苦しさにしっかり答えてくださる詠子さん。
惚れてまうやろ~。

そしてついに、スズキとペコ吉は詠子さんと共に、現在も島郷で桃を栽培されているK子さんを訪ねた。


トウゴウの桃とは、どんな色、形をしているのか、ずっとずっと想像してきたペコ吉、念願のご対面である。

K子さんのお宅は、入口を入るまで想像もできないほど広大で立派だった。
目の前に並ぶ蔵。母屋の横にある農作業に使われるものが収納されているであろう納屋でさえ、ペコ吉の家が、そのまんますっぱり入っても有り余るスケール感だ。

すごい、とか、広い、とか、一通りびっくりしたところで、K子さんがニコニコと出迎えてくださっていることにようやく気がついた。

コロナ禍なので、お互いにマスクをしていると表情が読み取りにくい。目元が優しく微笑まれていることでようやく笑顔でいらっしゃることがわかった。

蚊が多いので虫除け、しっかりとね、とK子さん。

ガッテン承知とばかりに詠子さんが虫除けスプレーを取り出してくれた。スズキ、詠子さん、ペコ吉、シューシューとスプレー。

K子さんもいかがですか? まるでビールでもいかが的なノリで虫除けスプレーをすすめると、
「私は、これで」
業務用?と思われる大きなスプレー缶を取り出すやいなや、頭の先から足もとまで、盛大にスプレーするK子さん。

はて? 農家専用の虫除けスプレーなの?
※ここから先は、決して真似をしないでください※

よく見るとそれは、ハエ・蚊用殺虫スプレーと書いてある!
まったく躊躇せずに、シューシューとスプレーするK子さん。

!!!

この瞬間に、スズキとペコ吉は、K子さんが大好きになってしまった。
人体に向けてスプレーしてはいけないものを認めるということではなく、K子さんの純粋なたくましさに感動してしまったのだ。

K子さんは、島郷で桃をはじめ、果物や野菜などを栽培しているお宅に嫁いで来られたお嫁さん。
つい数年前まで、農作業とは無縁のかたい仕事に専念していた。
農業を続けてこられた義父が病気で亡くなり、畑を引き継ぐことになったのだという。
栽培方法のコツはもちろん、農作業のイロハすら習ったこともないままのスタートだったそうだ。
仕事をしながら、無我夢中で畑に取り組むK子さんの姿を思った。

それゆえの、殺虫スプレー…。

真似はできないけれど、懸命に農作業に取り組むK子さんを心の底から応援したいペコ吉だった。

桃畑は、住宅地のど真ん中にあった。
畑のぐるりを槇の木の生垣で囲んであり、外からは、そこで桃が栽培されているとは、まったく伺いしれない。

収穫しやすいように、背丈を低く剪定した桃の木が整然と植えられ、桃の実にはひとつひとつ紙の袋がかけられていた。

もうひとつ桃畑はあり、ふたつあわせて100本近い桃の木を育てているそうだ。

袋ごしに、ほんのり桃色が透けて見える。うぶ毛が可愛いお尻のような桃!
数年ごしの念願がようやく叶いましたーッ!

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私はまだ上手に育てられないから、ちょっと小ぶりなの。もっと大きくて甘くて、立派な桃を育てる方がいるんですよ、とK子さんは額の汗をふいた。

山梨の特産物だった桃を沼津でも栽培できないか、と明治時代、数人の農家が山梨で桃の栽培を学び、島郷に持ち帰ったのが、島郷で桃の栽培が盛んになったはじまり。
温暖な気候と砂地であることなどが栽培に適し、一時は100軒以上もの桃農家がいるほどで、島郷一帯は、まさに桃の里のような様相だったらしい。

とはいえ時代が進むにつれ、一人また一人と桃の栽培から離れ、農地は住宅地に転換され現在に至る。

桃畑が生垣で囲われているのは、海からの強風で桃が傷つくのを守るため、というほど、桃の栽培は繊細で傷つきやすいものだという。

一本の木からたくさんの桃が実るようにするにはどうするのか、より甘い桃にするにはどうしたらよいのか、虫除けは? 肥料は? 

農家の知り合いや関係者の人たちから、ひとつひとつアドバイスをもらいながらの毎日。
それでもK子さんは諦めずに、畑を続けている。

島郷で現在も桃を栽培し続けているのは、K子さんのお宅を含め数件しかない。

なぜ続けるんですか、という質問をペコ吉は飲み込んだ。
代わりに、畑作業のお手伝いが必要な時は、教えてくださいね!と本気を込めて、お伝えした。

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極上の音に抱かれる珈琲屋さん

K子さん宅を失礼した後、詠子さん、スズキと共にコーヒーブレイクに「あずみ野」という喫茶店を訪ねた。

県道沿いに建つお店なので、ペコ吉は何度もその横を通っているのだが、なかなか立ち寄ることがなかった。看板に、ネルドリップで丁寧に淹れます、と書いていることもあり、なんとなく、こだわりの強いマスターがいて、コーヒーのことを知らない素人が迂闊に近寄ることを許さない、そんな妄想をしていたのだ。

とはいえ、今回は優しい詠子さんも一緒なので大丈夫! 

店内に一歩入ると、空気感が一瞬で変わった。
しっとりと艶のある椅子とテーブルは、すべて松本民藝家具。ペコ吉の憧れの品だ。
大きなカウンターには、ひとつひとつ店主が集めたであろうコーヒーカップが並ぶ。
その奥に、エプロンをつけたマスター。そして、とびきりの微笑みが美しいマスターの奥様。

あぁ、ほっこりするー。

畑を歩き回ったせいか、ノドがカラカラだったペコ吉が出されたお水を一気飲みしてしまうと、絶妙の間合いで、おかわりのお水を出してくれる奥様。

サイコーです!

アイスカフェオレ! 一瞬でオーダーするペコ吉。やわらかい声で、じゃ私は46周年記念ブレンド、と詠子さん。

え! このお店、46年も続けていらっしゃるんですか?

正確には45年。今年46年目ね。

学生時代に珈琲と音楽にはまって、人に使われるより自分で商売がしたい、とこの店を出すことにしたんだ、と笑顔のマスター。

そんな会話をしている最中も、スズキはオーダーに迷っている。
見かねたマスターの奥様のフォローもあって、ようやくソーダフロートを注文したスズキ。
あいかわらずのマイ・ウェイである。(マイだけに)

2杯目のお水も飲みほしたペコ吉に、これまた絶妙の間合いでお水を出してくださる奥様。
こういうのが、本物のおもてなしなんだなー。
マニュアルで決められた形ばかりのサービスが、どれほど味気ないものかを思い知った。

スズキのソーダ―フロートが運ばれると、三人そろって、乙女のような声をあげた。
メロンソーダの上に、バニラアイスのお花が咲いているのだ。

可愛い。

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あぁいう飲み物を、デートの時に恥じらいながら注文してみたいものだ。

三人それぞれ注文した飲み物を楽しみ終えるころ、マスターがこれ聞いてみます?とレコードを出してくれた。

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先年、大火で焼失してしまったパリの大聖堂でのミサ曲を収録したものだ。
とてもクリアで透明感のある音色。聖歌隊の声の反響具合から、大聖堂の奥行、高さ、空気感までもが伝わってくるようだった。
目を閉じて音に耳を傾けていると、まるで教会の椅子に腰かけながら、演奏を聴いているような錯覚に陥りそうだった。

あまりにも美しい音に、三人とも言葉も忘れ、聞き入っていた。
いつまでもこの音の波間に漂っていたいような心地よさが、心を穏やかにさせてくれた。

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もう一枚、こちらのレコードはどうです? とマスター。
人格者、医師として世界的に有名なシュヴァイツァーの演奏によるレコードだった。
アルバムを出すほどの音楽家だったことはまったく知らなかった。
たまたまドイツからいらしたというお客さんにこのレコードを聴かせたところ、地元でさえ、このレコードを聞くことはなかなかない、と言われたという。

クラシック好きのマスターが、若い頃からこつこつと集めたレコードのコレクションはなかなかにすごそうだ。

そして、立派な真空管のオーディオセット。
そういったことに、まったく疎いペコ吉でさえ、だいぶすごいものだ、ということくらいは理解できた。
このオーディオだから、レコード特有のチリチリというノイズが一切なく、クリアな音を楽しめるのだという。

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極上の音楽とコーヒーを、極上の椅子に座って楽しむ贅沢。

これは、大人にならないとわからないなー。おばちゃんになっててヨカッタと思う瞬間である。

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あずみ野
沼津市下香貫島郷2976-2
℡055-932-5444
8時30分~22時 月曜休


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ikorの詠子さんがどうぞ、と差し出してくださったトウゴウの桃を使った焼き菓子。
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